ここのところ、あちこちで「日本酒マニア」という称号をいただくのだが、個人的には自分の事をマニアだとは思っていない。
僕の思うマニアとは、飲み方にこだわりがある方や自宅で酒を熟成させている方、限定酒を酒屋とのパイプなどを使って入手できるまたは飲食店とのパイプを使って飲むことができる、そんな方々ではないかと思う。
それと比べると、僕は、僕を含む一般人が酒屋にふらっと入って簡単に購入できるお酒を中心に紹介している。
ご覧の通り酒屋との太いパイプがあるわけではないし、蔵元と仲が良い訳でもない。
今の時代取り寄せれば多くの酒と出会う事が出来るが、今の所はそこまでして入手するつもりもない。
あくまでも酒と店主(店員)との一期一会を楽しみたいと思っている。
だから、マニアとは言わないと思う。
しかし、「お詳しいんですね~。」などと黄色い声で言われると喜んでしまうのだから、たちが悪い事この上ない(苦笑
ま、そんな与太話はさて置いて、今月の掲載本数は10本。
やや多めではあるが、その内の3本は180mlサイズのものだ。
今月のナンバーワンは、JUNGIN GLASSの白瀑に軍配を上げた。詳しくは記事に書いているが、どストライクのお酒だった。
(評価は★★★★★~なしまで。あくまでも個人的な好みが判断基準。)
あさ開 純米 ★★
岩手県盛岡市 株式会社あさ開 720ml 1,050円 フレスタ@佐伯区海老園
あさ開。
何だか面白い響きの名前だなと思い調べてみると、南部藩士だった創業者が1871年(明治4年)の創業時に、「侍から商人としての再出発」と「明治という新しい時代の幕開け」に掛けてつけた名前という事が分かった。
なるほど、どことなくニュアンスは伝わってくる。
ところで、本酒はラベルデザインが古臭く、そのせいでどうも手に取る気になれなかったお酒。
いわば飲まず嫌いだった訳だ。
しかし、もういい年の大人なのだからそういった事も解消していかなくてはいけないと思い、やや思い切って購入。
丁度、料理用の純米酒が切れかかっていたこともあって、どうしても口に合わなければそちらに転用すれば良いという思いも購入の後押しとなった次第。
まずは常温で飲んでみると、飲み口はとても滑らか。
後味は水のようにさらりとしている。
旨みが少ない端麗系のお酒だ。
決して悪い訳ではないのだが、今の僕はこういったお酒を好まない。
後日、56度付近まで温めて飲んでみると米の風味が開き、印象が良くなった。
原稿を書いている時点で1合残っているので、それも温めて飲むつもりだ。
華鳩 純米生もと ★★★
呉市音戸町 榎酒造 720ml 1,200円 フレスタ@佐伯区海老園
榎酒造は以前より「清盛」という銘柄のお酒を販売しているが、大河ドラマで平清盛が始まったため全国各地からの注文でてんてこ舞いになっていたりするのだろうか。
榎酒造は元々、酒で酒を仕込む「貴醸酒」で有名な蔵。
新酒から20年物の大古酒まで色々なラインナップを取り揃えてらっしゃる。
ちなみに僕は、貴醸酒を飲んだ事がない。
今まで縁がなかったのだが、その内に飲む機会も巡ってくるだろうと思いながらも早何年だ。
さて本酒は、とても寒い日の夜に熱燗用にと思い購入した。
まずは常温で一杯。
生もとらしい酸味とほこりっぽさが混じったような味わい。
奥の方に米の旨みが隠れている感じがする。
僕にはちょっと飲みにくいかな。
60度超に温めて飲んでみると、思った通り酸味とほこりっぽさが隠れ、米の旨みが膨らんできた。
個人的にはもっと米っぽいのが好みだが、本酒は飲み飽きしない良い酒で燗向きだと思う。
白瀑(しらたき) JUNGIN GLASS ★★★★
秋田県山本郡 山本合名会社 180ml 500円 友人経由で購入
山本合名会社が醸す白瀑は、中区胡町の大和屋酒舗に行くと「ど・純米」(白い濁り酒)「ど・ピンク」(ピンク色の濁り酒)「ど・黒」(黒いお酒)「サマーど」(青い瓶のお酒)というラインナップが目立つ存在なので、ともすると「際物」と思われかねない。
しかし普通のお酒を飲んでみると分かるんだが、この蔵はかなりの実力派。
仕込み水で酒米を栽培し、その米で酒を醸す事でも知られている。
生産量は700石程度と少な目。
今回飲んだのはJUNGIN GLASSとして提供されているもので、スペックとしては純米吟醸生原酒だ。
開封時の香りはとても控えめ。
飲むとにやけてしまうほどジューシーな旨味。
後追いでやってくる苦味は切れを伴う。
僕の好みに、どストライクのお酒だ。
一白水成 JUNGIN GLASS ★★★★
秋田県南秋田郡 福禄寿酒造 180ml 500円 友人経由で購入
一白水成は広島で扱っている酒屋を知らず、有名なお酒でありながらなかなか飲む機会がない。
福禄寿酒造自体は1688年の創業というから、300年以上の歴史がある酒蔵だ。
地元銘柄は福禄寿といい、一白水成は県外向けに作られたものだそうだ。
僕自身も飲むのは今回が3~4回目。
白瀑よりも吟醸香が香るタイプで、滑らかな酒質の中に旨みを包含する造り。
主張は強くないが、品のある味わいでなかなかの旨さ。
白瀑よりもこっちの方が好きな方も多いだろうなと思う。
甲乙つけがたい旨さだが、好みの問題で白瀑に軍配が上がる。
新政 JUNGIN GLASS ★★
秋田県秋田市 新政酒造 180ml 500円 友人経由で購入
新政酒造は1852年(嘉永5年)の創業。
現在の蔵元は7代目佐藤卯兵衛。
5代目の時代に「6号酵母」が新政のもろみから発見され、現在でもそれを使って酒を仕込んでいるとの事。
いわば「6号酵母」発祥の蔵という事だ。
昨年の8月の記事に家で新政を飲んだことを書いているが、その時よりも今回のJUNGIN GLASSの方が旨いと思った。
初手は米の甘味がふんわりと覆いかぶさってくる感じがあり、仕舞の苦味が利いている。
と思ったら2口目からはむしろ辛さがメインに感じられるようになってきた。
空気に触れて味が変わったという事なんだろうか。
ミント系のスキッと感は感じられないものの、どうもしっくりと来ないお酒であることには代わりがないようだ。
※JUNGIN GLASSの「春霞」はもちろん飲んだが、深酒の勢いで飲んでしまいまともな感想が書けないため割愛させていただく事とした。あぁ、もったいない(苦笑
中島屋 純米にごり ★
山口県周南市 中島屋酒造場 720ml ?円 酒商山田@中区幟町
中島屋酒造場のお酒といえば「寿」「中島屋」「カネナカ」が思い浮かぶ。
いずれも燗にして旨い酒という印象をもっていて、個人的なお気に入りは「カネナカ」だ。
今回はふらりと立ち寄った酒商山田で今までに見たことがなかった当蔵のにごりと出会ったため購入してみた。
中島屋酒造場は1823年(文政6年)の創業で、現在は11代目。
確か、100石程度しか作られていないと記憶している。
さて肝心のお酒だが、四合瓶の中身の内、9割ほどが白くドロッと濁っており、上澄みなどというものはほとんど存在しない。
この手のお酒は開栓に数十分以上掛かるものもあるのだが、本酒の開栓は苦労することなくできた。
冷たいままに飲んでみると苦味と酸味が強めで飲みにくい。
これは燗が良いだろうなぁとすぐに温めて飲んでみたが、酸味がやや減退した程度で飲みにくさは変わらない。
70度超まで上げて飲んでみたりもしたが、変わらず。
煮酒マニアの方なら飲みこなすのかもしれないが、僕にはちょっと手に余るお酒だった。
甲子正宗(きのえねまさむね) 純米吟醸原酒 ★★★
千葉県印旛郡 飯沼本家 720ml 1,365円? カジカワ@西区井口鈴が台
飯沼本家は1925年(大正14年)の創業。
杜氏は置かずに社員による仕込を行っている蔵で、千葉県では最大手の蔵との事。
併設した飲食店の経営や不動産管理・賃貸業なども手がけられており、これは収益源が複数あるリスク分散型の経営と言えばいいのだろうか。
さて千葉といえば、以前「山人」で飲んだ五人娘の寺田本家が真っ先に思い浮かぶが、飯沼本家という蔵は全く知らなかった。
初めて訪れた酒屋「カジカワ」のご店主の勧めに従い購入。
開栓直後、瓶口からは程よい吟醸香が香る。
飲んでみるとドシッとした旨みが印象的で、しかもとても後に引く。
苦味などの要素も感じるのだが、僕個人的には余韻が強すぎてくどく感じた。
福島の「常山」や「國権」の旨みに近いが、切れの悪さを考えると「國権」の純米吟醸が近いのかもしれない。
2日、3日と経つにつれ味は落ち着き、結果として余韻が弱くなってきたので飲みやすくなってきた。
残った1合を燗で飲んでみたが、大きくは変わらなかった。
賀茂泉 立春朝搾り 純米吟醸生原酒 ★★★
東広島市西条 賀茂泉酒造 720ml 1,575円 アバンセ@西区古江新町
すっかり賀茂泉を飲まなくなった僕でも、このお酒は飲んでみてもいいかなと思う。
立春朝搾りと言って、文字通り立春の朝に搾ったお酒だ。
賀茂泉酒造は酒都西条にある8つの酒蔵の中でも賀茂鶴や亀齢に並んで知名度が高いと思う。
公式サイトによると創業は1912年。
およそ100年の歴史があることになる。
僕は知らなかったのだが、友人からの情報に基づき調べてみたら平成22年に杜氏が変わっていた事が分かった。
今の所、大きく変わった印象はないが、今後の展開が少し楽しみでもある。
さて本酒は立春を少し過ぎた頃に入手。
開栓直後は桃や葡萄のような果実味が感じられ、しかしながら切れが良いためしつこさがない。
なかなかに旨いと思った。
開栓3日目には旨みと酸味がバランスし、初日よりも好ましい味わいになっていた。
他のスペックも本酒のように旨ければいいんだけど、と思いながら最後の一滴を飲み干したのだ。
鳳陽 純米 ★★★
宮城県黒川郡 内ヶ崎酒造店 720ml ?円 フレスタ@佐伯区海老園
以前、廿日市の「らくだ厨房」で開かれた東北のお酒を飲む会で少し飲んだことがあったのだが、この度は腰をすえて家飲み用に購入。
鳳陽を醸す内ヶ崎酒造店は、1661年(寛文元年)に創業された宮城県最古の歴史ある蔵元だ。
鳳陽という名は唐の時代の故事に由来しているとされ、家運の隆盛を願って名付けられたとされている。
全国新酒鑑評会での金賞受賞暦は多数で、近年ではインターナショナル・サケ・チャレンジやインターナショナル・ワイン・チャレンジでも受賞を重ねている。
今年度より杜氏が変わったらしく、磯自慢にもいらしたという新しい杜氏の元、酒造りに励まれているとのこと。
さて本酒の感想だが、開栓直後の香りは個人的にはちょっと苦手なタイプだった。
原材料由来の香りだとは思うが、何かこう上手く説明が出来ず、もどかしさが募る。
米の旨みは中濃程度。
丸みを帯びた口当たりに寄り添うような米の味。
総じて柔らかい印象だ。
開栓2日目からはその香りは減退し、随分と印象が良くなった。
天狗舞 大吟醸 中三郎 ★★★
石川県白山市 車多酒造 720ml 5,250円 酒商山田@中区幟町
2月最後に登場するのは天狗舞「中三郎」。
自宅で飲む日本酒の中ではハイスペックかつハイプライス。
自分の誕生日に飲むつもりで購入。
こういう時じゃないと、四合瓶で5,000円オーバーのお酒なんて買う理由付けができないし。
さて、天狗舞を醸す車多酒造は1823年(文政6年)の創業。
初代が諸国行脚の際に口にした酒の旨さが忘れられず、自らの住まいがある地で酒蔵を始めたとの事。
当時の蔵は森に囲まれており、葉が擦れ合う音がまるで天狗の舞う音に聞こえたという謂れから、「天狗舞」という名前が生まれたそうだ。
車多酒造の杜氏は、能登四天王と呼ばれる名杜氏の1人「中三郎」氏が務めており、今回購入したお酒は杜氏の名を冠したもの。
蔵の、杜氏の、自信作と解釈して間違いは無いだろう。
ちなみに他の3名は、静岡県「開運」の故・波瀬正吉氏、石川県「常きげん」の農口尚彦氏、富山県「満寿泉」の三盃幸一氏だ。
開栓時の香りは穏やかだが、酒に込められた米の旨みがしっかりと感じられるもの。
実際に飲んでみると、初手は米の旨み・甘味がグッと感じられる。
酸味や苦味もやや感じるものの、最初の印象のまま、やや長めの余韻を楽しめる。
二日目以降は旨味がドン!と乗ってきた。
なお飲み方はガッチリ冷やした方が良いと思う。
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コメント
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白たき、飲んでみたいです!
めっちゃ良さそう!
わたしの最近のオススメは、兵庫県明石市の「太陽酒造」が醸すお酒です☆彡後は、少々ベタ?ですが灘五郷の「剣菱」ですね。やっぱり地元のお酒は贔屓にしちゃいますよね!(あ、兵庫県民なんです^^)
ところで、最近スライムさんがあまり登場しないんですね。密かに楽しみだったのですが(笑)
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太陽酒造ですか~。広島には出回ってない蔵ですねぇ。調べてみると、生産量は100石程度なんですね。この位だったら地元オンリーになりますもんねぇ。
心意気のある蔵のようで、かなり気になります(笑)。
僕は、兵庫のお酒でしたら奥播磨が好きです。
スライムの事を気に掛けて下さって、ありがとうございます。
元気にしていますので、時々顔を出すように言っておきますね(笑)。
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お酒をやめたんですが、
許されるなら、やっぱりお酒をたくさん飲みたいですね~苦笑
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増井さん、こんにちは!
色々とご事情あっての事なんでしょうが、また飲める日が来ると良いですね。
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ちょっと遅くなりました。
秋田のお酒を購入いただいてありがとうございました。
面白く、そして素晴らしい企画だったので皆さんに連絡させていただきました。
美味しいお酒でしたね。
美味しかったのですが・・・。
実は僕、春霞の優しさが好きだったんですよね。
皆さん、意外と春霞の評価が低かったんですよね。
ううむ、これだから楽しいのかな?
また何かありましたらよろしくお願いいたします(なんのこっちゃ)。
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JUNGIN GLASSの件ではお世話になりました!
春霞がお好みですか~。
ま、お酒って嗜好品で、みんな好みが違うから面白いですよね。
育った環境や出会ったお酒の順番も関係するでしょうし。
また、何かの時にはよろしくお願いします(笑)。