中区中町にある和食店『田心』。今から2年ほど前にその存在に気付き宿題にしていたお店です。
この度、ようやく訪問することが出来ました。
お店の場所は三井ガーデンホテルの北側で、トスカーナ料理を得意とする「ラ・ムージィカ」やアメリカンなお店「BLUE MOON CAFE」の並びです。
こちらのご主人は「山人」で修行されたとのこと。
「山人」の料理はなかなか旨かったですので、期待しての訪問ですよ。
内装はきちっとした和食店の雰囲気ですが、お店の雰囲気はそれよりも少しざっくばらんな感じで敷居が高い感じは受けません。
客席は入り口から奥に伸びるカウンター席にテーブル席と掘りごたつが2つずつあったでしょうか。
厨房はこの手のお店らしいフルオープンタイプ。
手元は見えませんが各人の動き、食材の扱い方などは見て取ることが出来ます。
以前「獨楽」の記事でも書きましたが、料理人の所作を見るのも楽しみの一つとしていますので、もちろんカウンター席へ。
ま、見たからと言って何が分かるわけではないんですが、何だか楽しいんですよ。
板場に立っている方は皆さん坊主頭。
「山人」の皆さんや「にかいのおねぎや笹木」の皆さんもそうだったと思いますが、和食の料理人の流儀と言うことなんでしょうか。
料理の金額は思いのほか安く、1,000円オーバーは少なかったように記憶しています。
注文したのは、刺身の盛り合わせ・梶谷農園のリーフと自家製燻製のサラダ・小イワシの天ぷらを。
左上は突出で、蟹の身の煮凝りと豆腐。
塩気と甘さが控えめの代わりに蟹の身の甘さが引き立てられた一品。
刺身の盛り合わせは、甘海老・鯛・鯖・太刀魚炙り・環八・蛸の6種類。この中では鯛の食感と旨味が良かったです。
そして特徴的だったのはその提供温度。
一般的には、刺身は冷たく提供されますが、こちらのは常温に近い状態での提供でした。
この辺りもこだわりかなと感じましたが、いかがでしょうか。
サラダは、梶谷農園のリーフの旨さが鉄板。
燻製は鯖でしたが、これはなくても構わないかなと感じました。
小イワシの天ぷらは、さすがに旨いですねぇ。
『田心』は、日本酒の揃いも豊富で冷酒向きと燗向きがオンメニュー。冷蔵庫に入っているお酒でメニュー外のものもありました。
後から教えていただいたんですが、熟成酒もそろえているとの事。
その中から僕がまず注文したのは、奈良県の風の森。米は秋津穂(あきつほ)で。
今までに露葉風(つゆばかぜ)と雄町を飲みましたが、それらと比べると米の旨味が芳醇で仕舞の切れもいいです。
開栓から時間が経っていないせいか、発泡が残っていてなかなか楽しい一杯でした。
続いては今年の造りを最後に酒造りを止められた、広島県の喜美福で蔵生を。
日本酒度-4・酸度2.7の数値とは裏腹に、辛目の口当たりで酸味は少なめ。しみじみと飲ませていただきました。
ここいらで世羅産アスパラガスの炭火焼と葱奴を追加。
アスパラガスは抜群の旨さ。
ホッコリとした食感が良いのと内包した水分がジュワッと出てきて何もつけなくても旨かったです。
葱奴は塩が立った仕上がり。この料理の主役は葱ではなく海苔かなと思うほど、香り豊かな海苔が堪能できました。
お酒の最後は、七本槍を熱燗で。
提供までにお燗番の女性とご店主と思われる男性の二人が味と香りをチェックする念の入れ方。
そしてホッコリとした米感が味わえる一杯でした。
七本槍の熱燗ってこんなに旨かったかなぁと、認識を新たにさせられましたよ。
〆にご飯ものをいただいて、この日は終了。
捕らえ方によっては誤解を生む味付けかなと言うのが、料理への感想です。
僕は、素材の味を楽しむための薄味で、甘さなどは素材から出る味で補完するという考え方と理解しました。
が、塩分や甘みを極力抑えた味付けが多いですので、人によっては「塩加減がおかしい」とか「ただの薄味料理じゃないか」と指摘するかもしれません。
料理の方向性には色々ありますが、自分の好みに合わないからといってその方向性を断じる事はしないようにしなくては、と気持ちを新たに出来た訪問でした。
ごちそうさまでした!!!
(2012.7)
■お店のデータ
田心
広島市中区中町1-17
0822367117
18~24時
定休日:日曜日
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