酒とは広く浅く付き合うことを是としているが、そんな僕でも深入りしたくなる蔵に出会う事がある。
飲み始めるきっかけとなった悦凱陣@丸尾本店を筆頭に、仙禽@せんきんや笑四季@笑四季酒造、原田@はつもじぢなどがそれに該当する。
最近、その蔵の酒を5~6本一気に購入して、開栓から飲み終わるまでの変化を楽しむ月があっても良いのかなと考えるようになった。
記事としては同じ蔵の酒が続くのでつまらないかもしれないが、自分が楽しまないと長続きはしないので、首尾よく実現した暁にはご容赦いただきたい。
特に笑四季の飲み比べは面白いだろうなと感じている。
さて、今月の掲載は8本。
この中では、「やまとしずく」が思いのほか米感が強く旨い酒だった。
確か山廃も売られていたはずなので、近々飲んでみたいと思う。
(評価は、なし~★★★★★まで。あくまでも個人の嗜好による。)
瑞冠 純米吟醸 山はい仕込み ★★★
三次市甲奴町 山岡酒造 720ml 1,260円 ユアーズ@中区袋町
「瑞冠」を醸す山岡酒造がある甲奴町は、2004年に三次市や双三郡と合併し、新しく出来た三次市に移行。
かつては上下町や総領町と共に甲奴郡を形成していたが、2005年には全町が離脱し、甲奴郡は消滅。
1999年から2006年までに行われた平成の大合併の流れの中で、同様に消えていった市町村は多いと言われている。
創業は1751年~64年(宝暦年間)。
銘柄としては、古くは「祇園正宗」、現在は「瑞冠」や「芦田川」「岩海」など(と書かれているが、芦田川と岩海には出会った事がない。地元銘柄だろうか。)。
当蔵の売りの一つは幻の米と呼ばれる「亀の尾」を自社栽培し、使っている事。
「亀の尾」は明治時代から栽培が始まったが、化学肥料に弱いなどの理由で現代農業には適さず、1970年代にはほとんど栽培されなくなった。
今から30年ほど前に、新潟県・久須美酒造や山形県・鯉川酒造の尽力より亀の尾が復活。
近年では全国40程度の蔵で使われており、当蔵もその一つである。
本酒は、ふらりと立ち寄ったユアーズで棚にぽつんと残っているのを見つけ、久々に瑞冠も良いかもと思い購入した次第。
飲んでみると、ヨーグルトっぽい酸味・甘みと米感が混じり合っている旨さが感じられる。
口当たりはいたって丸く、すすっと喉を伝い、胃へ流れ込む。
燗にすると酸味と甘みが減退するものの米感が膨らみ、「あぁ旨いねぇ。」とつぶやきながら、盃を進める楽しみを味わう事が出来た。
瑞冠を日常的に飲める環境にある事は、日本酒好きにとって実に幸せだという事を肝に命じておきたい。
ソガ・ペール・エ・フィス ヌメロ アン ★★★
長野県上高井郡 小布施ワイナリー 750ml ?円 大和屋酒舗@中区胡町
本酒を醸す小布施ワイナリーは、1867年(慶応3年)の創業。元々は日本酒を醸していたそうが、戦時中の米不足により廃業し、やむなくワイン造りを始められたとの事。
一旦廃業し酒造免許を返上すると、基本的には復活は不可能とまで言われているが、1962年(昭和37年)に異例の免許復活を果たされたそうだ。
日本酒は趣味で造っているとされており、現在の日本酒の石高は40石程度と極少量である事も頷ける。
小布施ワイナリーの日本酒と出会ったのは数年前。
「にかいのおねぎや笹木」という店で初めて飲んだ「ドメイヌ・ソガ」は、日本酒らしからぬ名前のインパクトが強く、長い間記憶に残った酒だった。
本酒は久々に立ち寄った大和屋酒舗で見つけ、復刻版の一号酵母で醸した点に興味を魅かれて購入した次第。
開栓直後は、たおやかな花の香りと意外にも醇な旨味。
仕舞には多少なりとも切れがあるので、しつこさは感じない。
燗にするとスレンダーな味わいとなり、個人的には面白みにかけると感じた。
全般的に旨口系統の酒という印象。
一号酵母のレア感は脇に置いたとしても、悪くない一本ではないだろうか。
やまとしずく 生もと純米 ★★★★
秋田県大仙市 秋田清酒 720ml 1,320円 大和屋酒舗@中区胡町
本酒を醸す秋田清酒が蔵を構える大仙市は、2005年(平成17年)に大曲市と仙北郡の合併により誕生した市である。
秋田県の中央南部に位置し、出羽山地や横手盆地、真昼山地などを擁する多様な自然を見せる地域でもある。
雄物川を始めとした数本の川が流れ、有数の穀倉地帯である横手盆地があるためか酒蔵の数は比較的多く、千代緑の奥田酒蔵店や秀よしの鈴木酒造店など5蔵が酒を醸している。
さて、秋田清酒は「刈穂」という銘柄で知られているが、個人的には良い印象が残っておらず、すすんで飲む事のない銘柄という認識を持っている。
本酒は、先に紹介したソガ・ペール・エ・フィスを買った際に同時に購入。
ラベルに書かれた文字を上から読むと「へ・と・ちょん」と読むことができ、その読み方とゆるいフォントが気に入って、今までに何度か飲んでいる酒だ。
開栓直後は生もとらしい酸味ではなく、どちらかと言うと山廃系の酸味で米感が感じられ、水準以上に旨い酒だと感じた。
燗にすると味が平坦に感じたので、常温が飲み頃なのかもしれない。
開栓から数日経っても味が崩れる事はなく、その旨さには変わりがなかった。
蒼田 純米吟醸 一度火入れ ★★
福岡県八女郡 喜多屋 720ml 1,418円 石川酒店@西区古江西町
日本一大きな杉玉が有ることでも知られる喜多屋。
福岡県八女市にて文政年間(1818~1830年)に創業した当蔵は、「酒を通して多くの喜びを伝えたい」との志から「喜多屋」と名付けられたとの事。
当蔵がある八女市は八女茶・電照菊で有名な他、邪馬台国があったエリアとしても名前が出てくる事が多い。
さて本酒は、石川酒店で蒼田がリニューアルしたと聞き、興味を惹かれ購入した次第。
開栓直後。
ぐい飲みから感じられるのは、草のような香り。
一口含んでみると、度数のわりにはアルコールが強く感じられる。
味わいとしては米の甘みが先行しているが、辛味と強めの苦味も感じられる。
アルコール感と苦味が強く、少し飲みにくい印象なので、しばし置いてみる事に。
開栓から2週間が経つときつかった苦味が減退し、旨味のある辛口酒になってくれた。
老亀 八反錦 辛口純米生 ★★★
山県郡北広島町 小野酒造 720ml 1,370円 蔵にて直接購入
小野酒造のある北広島町へは高速道路を使うと約1時間で着き、所要時間からはそう遠くない印象を持つ。
しかし実際には、壬生花田植や大佐スキー場などを擁するものの、広島市内から訪れる事はそう多くないエリアではないだろうか。
個人的には、某漫画家の講演会を聞きに公民館を訪れたことが思い出として残っている。
創業は1697年(元禄10年)で、今から約320年前。
僕の記憶では、広島県内の酒蔵では賀茂鶴酒造・白牡丹酒造に次ぐ老舗ではないだろうか。
本酒はドライブで「道の駅ちよだ」に立ち寄ったついでに、蔵を訪れ購入した次第。
開栓初日。
瓶口からは、ほのかに米の香りが漂う。
一口飲んでみると、生酒らしい香りが立ち、その直後に舌がピリピリとする辛味に少しの渋みも。
二杯目以降は辛味と渋みが落ち着き、旨味と甘みが顔を出すようになった。
アルコール度数は18%。
数値よりも高く感じるため氷を浮かべてロックで飲んでみたが、口当たりが少し柔らかくなり多少は飲みやすくなった。
開栓から2週間が経つ頃には辛味が落ち着き、旨口にチェンジ。
辛口とは言え少し辛過ぎるように感じたが、時間をかければバランスが良くなる一本という印象を持つに至った。
開華 無垢之酒 純米吟醸原酒あらばしり ★★★
栃木県佐野市 第一酒造 720ml 1,575円 のづ酒店@佐伯区藤垂園
鳳凰美田や仙禽、東力士などを擁する栃木県。
その最古の蔵が、本酒を醸す第一酒造である。
創業は1673年(延宝元年)と約330年の歴史を有する。
明治時代には「文明開化」にかけ「開化」という銘柄が誕生したが、第二次大戦後には現在の「開華」に変わり、今に至る。
なお、蔵のある佐野市は広島とはなじみが薄いが、石井琢朗氏の出身地と書けば、カープファンには途端に親近感が出てくるから不思議なものだ。
さて本酒は、1年半振りに訪問した「のづ酒店」で見つけ、未飲銘柄のため購入した次第。
ラベルに大きく書かれた「無垢之酒」とは日本名門酒会の企画で造られた酒で、「純米吟醸」「あらばしり」「無ろ過生原酒」という縛りがあるとの事。
全11銘柄があり、広島では音戸町の「華鳩」が参加されている。
開栓し飲んでみると、とろんとしたメロンの
ような旨味が感じられるものの、それはしつこくなく、さらさらっと流れるように消えていく。
仕舞に効いたほのかな苦味が良いのかもしれない。
この時点では果実味が強い酒という印象だったが、開栓から30分ほど経つと全体が穏やかになり、食中に飲んでもいけるかなと思わせてくれた。
龍勢 生もと八反純米 無ろ過生原酒 ★★★
竹原市本町 藤井酒造 720ml 1,470円 石川酒店@西区古江西町
広島県瀬戸内沿岸のほぼ中央部に位置する竹原市。
古くから港町として知られ、江戸時代には製塩業で栄えたとの事。
近年では、写真好きの女子高校生である沢渡楓とその友達が、それぞれのまだおぼろげな「夢」を追いかけるアニメ「たまゆら」の舞台としても知られており、竹原市のホームページ(産業振興課)では「おすすめ舞台訪問コース」が紹介されているほど。
そんな竹原市には竹鶴酒造・中尾醸造・藤井酒造の3蔵があり、いずれも個性のある酒を醸している。
藤井酒造の創業は1863年(文久3年)。
創業当時、蔵の裏山である龍頭山の湧水で酒を醸した事から「龍勢」と名付けられたとの事。
その湧水は軟水であったことから酒造りに苦労をされたようだが、以前紹介した三浦仙三郎氏による「軟水醸造法」の確立により酒質が改善され、第1回全国清酒品評会(明治40年)において日本一を獲得。
それ以降「龍勢」が当蔵の看板商品となった。
2006年5月より民事再生手続きを行うなど苦しい時期も有ったが、2007年にはジャパン・フード&リカー・アライアンスのメンバー企業となり現在に至る。
本酒はいわゆる新聞紙に包まれた龍勢のシリーズ。
今までに番外品を好んで飲んでいたが、生もと造りに興味を持ち購入した次第。
開栓直後の瓶口からは、麹の良い香りがほんわかと漂う。
実際に飲んでみると、瞬間的には米の旨味が感じられるが基本的には辛味先行の造り。
30分も経つと生もとの酸味が強くなり、ラベルに違わぬ印象となった。
個人的には、近年飲んだ龍勢の中では高く評価したいと感じた。
玉川 純米吟醸手つけず原酒 五百万石 ★★★★
京都府京丹後市 木下酒造 720ml 1,800円 大和屋酒舗@中区胡町
蔵については2011年10月の記事を参照の事。
開栓初日。
想像よりも強めの炭酸が舌に感じられ、少しの驚きと共に酸味と米の旨味が押し寄せる。
余韻には、玉川らしい重めの旨味が続く。
時間が経つと酸味も強くなり始め、両者の拮抗具合はなかなか面白い。
アルコール度数は17~18度もあるのに、そこまでの強さを感じさせない事とフレッシュ感が強い事が特徴だろうか。
開栓4日後には炭酸は落ち着いたが、味わいには大きな変化は感じられなかった。
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コメント
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音戸の榎酒造に行ってきます☆
おいしいお酒に出会えるかな。。。
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お、蔵開きでしたっけ?
旨いお酒に出会えると良いですね〜。
ちなみに僕は周南市周辺の酒蔵を巡って来ます!