「ごめんなさい!ごめんなさい!」
ある日の昼下り、職場でパソコンに向かっていたら子供の悲痛な叫び声が聞こえた。
すわ、児童虐待か?
窓を開けて声のする方向を確認。
左だ。
さらにバルコニーに出て声の主を探してみた。
すると職場の北側にある国の名勝「縮景園」前で子供が泣いているではないか。幼稚園児とお見受けした。
どうやらお母ちゃんに怒られたらしい。
何だ、そう言う事か。
それにしても大きな泣き声だなぁと、少しの間、眺めていると異変に気付いた。
この子、かなりの乱暴者である。
まず手始めに、脱いだ上着(幼稚園の制服と思われる)をブンブン振り回しながら謝りつつ、お母ちゃんにささやかな抵抗を試みているようだ。
お母ちゃんも慣れたもの。
狼藉を働く子供にはほとんど無反応。
無視を決め込むという、定番の作戦に出ていた。
この子、これ位で終わるタマではなかった。
国の名勝「縮景園」は平日でも観光客が多く、泣いている子供はとても目立つ。
それを知ってか知らずか、今度はズボンを脱ぎ始めた。
公道で、だ。
小雨が降っていた日なので、道路に寝転がり駄々っ子をする作戦を回避し、ズボンを脱いでお母ちゃんを困らせるという高等戦術に出た。
パンツは黒だ。白じゃなくて良かった。
亀の甲より年の功とは上手い事行ったもので、この奇襲作戦にもお母ちゃん全く動じず。
傘で顔が見えないので分からないが、子供の、子供なりの高等戦術を、お母ちゃんは、そ知らぬ顔で無視している。
この子、今度はパンツを脱ぎ始めた。
さすがにそれはまずいんじゃないか?
どうやら彼も僕と同意見だったらしい。
半ケツを見せた段階でパンツを上げた。
パンツが白だったらリアルクレヨンしんちゃんだよ、これじゃ。
お母ちゃんは西に向かって歩きたい様子。
歩を進めると、この子、手足を広げてお星様の形になりお母ちゃんの前に仁王立ち。
この頃になると職場では、仕事そっちのけでフィナーレまで見届ける体制に。
あ、電話だ。
僕が少し目を離した瞬間に、脱いだズボンが石垣塀の上に飛んでいくというハプニングが。
どうやらこの子が投げたらしい。
お母ちゃん、ちょっと考えて、縮景園の中に向かった。
管理の人にズボンを取ってもらおうという考えだろう。
この子、先ほど振り回していた上着を腰巻にして、お母ちゃんの後をちょこちょこと着いて行った。
何だか間抜けだけど、かわいい。
お母ちゃんは園内へ、この子は正門前にて待つ。
回収したズボンをこの子が穿き、これでフィナーレかと思いきや、もう一波乱。
今度はズボンを脱ぎ穿きしたり、石畳に座り込んで駄々っ子体制をとったりと必死の抵抗を試みた。
しかし亀の甲より年の功。
お母ちゃんは慌てることなく西方面に立ち去ろうとした。
この子、何を思ったか、近くで見ていた老人会の集団に殴り込みをかけ、おじいちゃんを叩いた!
八つ当たりかよ。
なんという狼藉を。。。
道端に停まっていた車に隠れて、親子間のやり取りが良く見えなかったのだが、結局、お母ちゃんは西方面に歩みを進め、この子、それを半べそかきながら追いかけていき何とか行く手を阻もうと頑張る。
こんな構図を何度か繰り返しながら、この親子は我々の視界から消えていったのだ。
善悪の判断はひとまず横に置いて、この子のお母ちゃんの気を引こうとするパワーとお母ちゃんの徹底した知らん振りに、乾杯 ^_^)/▼☆▼\(^_^) 。
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